コーポレートベンチャーキャピタル アンドリュー・ロマンス(著)を読んだ

「大胆に遠くに行き,長くとどまろう」がキャッチフレーズのアンドリュー・ロマンスが書いたコーポレート・ベンチャーキャピタルを読んだのでメモです.

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■投資基準 ・シリーズAの条件はPMFを達成しているかどうか ・将来,自分の企業が顧客となるようなスタートアップに投資する.(自分が使いたいかどうか) ・戦略に沿っていて,会社の事業の梃子として資するスタートアップか.  (IBMだと,マーケットインテリジェンス(市場情報)を通じて生み出したボトムラインベースでの価値(会社事業の基礎を構成する要素に関わる価値)が重要)

■CVCの裁量 CVCはCFO直下で裁量のある組織が望ましい.

■CVCとしてのスタートアップの関わり方 ・自社将来ビジネスのエコシステムになりうるスタートアップと関わる ・最低限の投資を行えば,情報請求権を得られる.その情報で戦略的な提携等をよりよい形にするなど戦略的機能を強化できる. ・CVCはリードインベスターズになるべきではない.収益に目がいって,コーポレート部門との連携が取りづらくなる可能性がある. ・スタートアップ,他の投資家にとっても合理化であるような投資をする.

■CVC存続の条件 CVCは25〜33%程度のリターンがいる. #今回みたいな不況こそ,CVCの存続が問われる時期なのかもしれません

■良い投資家の条件 ①投資対象のテクノロジーの基礎をマスターしている ②スタートアップ,または業界団体に在籍したことがある ③素晴らしいビジネスチャンスがどういうものかわかっている ④ビジネスに伴うリスクを発見し,それを受け入れることが出来る ⑤事業を発展さえせるための取引のストラクチャーを組むことが出来る ⑥そして,創造的に考えることが出来る

重要なポイントの一つは独立心を持っていること. 自分のビジョンや投資スコープの範囲内にある事業部門から少し外れたところで仕事ができない投資家であれば,その投資家は所属する会社の役に立ててない. マーケットで起きていることや,それが自分の組織にどのような影響を与えるのか無関心な同僚に囲まれて働き続けているのだとすれば,自分自身を騙していることに等しく,それは会社の利益にならない.

■リターンの考え方 与えるものと手に入れるものはなにか,を把握する. まとめると,財務的リターンと戦略的リターン,加えて効率的なオペレーションがCVCの成功を決める. 投資先の会社が破産したら財務的リターンも得られない.

戦略的な価値と財務的な価値のバランスを取ることがCVCの永遠の課題であり,基本,戦略的な付加価値のないところには投資をしない. 戦略的な価値としては,今後のディスらプションを把握するため,自社事業のテコとなるスタートアップを見つけ,拡大を支援するため,などが考えられる.企業の将来に繋がる業務提携や新たなオペレーションなど強固なパイプラインの構築が重要である.

■インベスト・マネージャーを選ぶ条件 誠実さ,経験,ネットワーク

■スタートアップと関わる際のポイント 自社が投資していないステージに投資しているファンドへ投資することで異なるステージ,特にアーリーステージのスタートアップへのアクセスを得ることが,ディスラプトを把握するためには重要. 研究所がスタートアップの技術を評価するスキームはあり.自社技術との適合性なども合わせて評価する. 製品開発の初期段階から知的財産に制限がかかることを望まないスタートアップが多い.そのため,開発費用を提供して知的財産権を得るモデルは資金調達の選択肢が多い場所だとうまくいかない.

スタートアップが有利になる契約をすることがCVCにとって重要. スタートアップが大企業に望むのは資金と顧客や新規マーケットとのつながりであることを忘れない.

持株会社直下でのCVC運営 持株会社直下のCVCは事業会社とのシナジーをもたせるなら,投資の一部を事業会社とともに行うという手もある. エコシステムやバリューチェーンを構築する投資を行い,その中で買収のベストポジションを探っていくのが望ましい. 最も大変だった時に(資金が必要だった時に)CVCが投資を避けている点は起業家にとってマイナスポイントとなる. アクセラレータを軌道に乗せるには10年ぐらいかかる まず与えることが重要.

■CVCのチーム構成 ・社内調整が出来る人 ・CEO,CFOに近い人 ・シリコンバレー,弁護士等のエコシステムにコネクションを持つ人 ・VCを実行できる人 などがバランスよくそろっているとよい.