技術を武器にする経営--日本企業に必要なMOTとは何か 伊丹敬之, 宮永博史
表題の本を読了しました。 MOTに関する事柄が網羅的にまとまっており、日本企業の技術経営に必要なエッセンスがほぼ含まれています。 以下メモです。
■MOTの本質
イノベーションが生まれるまでの長い課程では、組織の内外の様々な人間社会の力学が生まれるため、その力学のマネジメントが技術経営の本質の一つ。 技術を育て、市場への出口を作り、社会を動かしていくために、組織で働く人々による学習活動をマネジメントするのが、技術経営の本質の一つ。
■イノベーションプロセスの3段階
1.筋のいい技術をつくる
2.市場への出口をつくる
3.社会を動かす
■筋のいい技術の条件
1.科学の原理に照らして、原理的深さをもつこと
2.社会のニーズの流れに照らして、人間の本質的ニーズに迫っていること
3.自社の戦略に合致し、事業としてのポテンシャルが大きいこと
4.技術を担う人材がいること
■技術の俯瞰図をもつ
ブームか、継続的におこる本質的な変化か。
■研究テーマポートフォリオの評価
1.成果
2.動機
3.成功確率
リスクとリターンのバランスをとること。 上記の3つを正確に見積もれることが技術の目利きができる、ということが重要。
■良いコンセプトの条件
1.聞いて驚き、使って驚くという伝染効果があること
2.驚くだけの技術と仕組みの裏打ちがあること
3.許容範囲内の価格設定であること
■顧客ニーズを把握する
1.顧客ターゲットを明確にする
2.ターゲットとのコミュニケーションを継続的に何度も行う
3.いかに早く、二の矢が準備できるか
■ビジネスモデル
ビジネスモデル=ビジネスシステム+収益モデル。ビジネスシステムは以下を考える。
1.何を自分が行って、何を他人に任せるか
2.自分で行うことをどのように行うか
3.他人に任せることを、どのようにコントロールするか
■リスク
1.市場の広がりがわからないリスク
2.既存事業とのカニバリゼーションリスク
上記を踏まえて実行の資源をどう確保するか。リリース時のトラブルに対する余裕も含めて資源を確保することが重要。
■イノベ―ションの継続
油断,誤解,硬直化でとまる。
1.時系列的につながる3つのコンセプトを用意しておく
2.カリスマリーダーから全員経営に移行する
3.初心に帰る
■技術者の間違い
開発スタート時点の競合分析にこだわり、開発中の競合製品の進化を見誤ることで、開発した技術に優位性がなくなる。 社内では新技術、世間では二番煎じとなる。 無駄な忙しさは以下が原因。
1.手っ取り早く,目の前の問題を解決しようとする
2.意味のある問いを発することができない
3.上位概念を構想できない
■3つのたこつぼ
学会、専門分野、開発プロジェクト。 枠をやぶれてこそプロフェッショナル。やぶれないのはスペシャリスト。